政治的生活

政治学を勉強しています。政治は見方によって様々な場面で表れます。なのでこのブログでも多くのことを取り上げていこうと思います。

菅直人『大臣』を読んで

菅直人は第94代内閣総理大臣を務めた政治家です。

今回は彼が新党さきがけ所属時に就任していた厚生大臣の経験を基に書いた『大臣』(岩波新書、1998)について意見を述べたいと思います。

 

 

 『大臣』で主に問題となっているのは、国民の直接的支持を受けていない大臣です。

政治学で用いられる考え方であるプリンシパル・エージェント論(本人=国民及び市民と置き、代理人=政治家と考え、代理人は本人の代わりとなって働く)から見ればその問題点が浮かび上がってきます。国民が選んだ政治家は国会で内閣総理大臣を指名し、選ばれた首相が大臣を任命するわけです。首相を代理人だと言うことさえ厳しいものがありますが、ましてや大臣を代理人だと言えるでしょうか?

 加えて、大臣は官僚から強い影響を受けており、大臣が自らの手腕を発揮することさえままならない状況が本書から見えてきます。官僚となると国民の信任は全く得ていないことになります。このことも大切な論点の一つとなっています。

 著者が主張するのは大臣が自らの能力を発揮するために、官僚の影響力が現れる場面を減らす、ということです。例えば大臣就任直後の記者会見では、大臣に就任した者が会見の直前にどの省の大臣に任命されるかを知るのに対して、官僚はそれ以前に情報を得て、会見の挨拶文を手渡すのです。これはその後の仕事の関係に大きく響くことになると著者は批判しています。

 

 菅直人個人へのイメージとしては、首相にはふさわしくないなと思っていました。東日本大震災でうやむやとなった外国人献金問題や、震災そのものへの対応に一定の評価を与えることはできないでしょう。ただ『大臣』に限って言及するならば、問題意識は政治家としてもっていてほしいものだと思います。首相としてはうまくいきませんでしたが、一政治家としては優れているのではないでしょうか。この点を比較するために安倍首相の著作である『美しい国へ』も読みたいなと思います。そのうちね。